「ありがと〜レイ」
姫はそう言いながらドアを閉め、レイに近付く。

「もう、ですからレイと呼ぶのはやめて下さいよ。」

なんだかんだ反論してもレイと言う呼び名は定着しているみたいだ。

「だって、何だかレイって呼び名がとっても合っているわ」
ふふっと口元に手を当てて笑うと、レイの頭の上に手を置く。
「私より背が低いし、何だか弟みたいなんですもの」
「僕の方が年上なんですから、弟みたいと言うのは止めて下さいよ。それに背はこれから伸びます!」
少しムキになるレイ。

どうやらなかなか伸びない身長がコンプレックスのようだ。

そんななかなか身長の伸びないレイは現在16歳。
同年代より低い身長と童顔が特徴らしい特徴だろう。

姫とは1歳違いであり、若干姫より身長が低いせいで、未だに年上としてみられていない。

「まあ、その内追い越すので覚悟してください。それより、早くしないと姉さん戻ってきますよ」
すねて意地悪に言うレイ。
すると姫も、わざとからかう様に言う。
「本当だわ。じゃあ行ってきますね。レイちゃん」

若干ひきつった顔のレイも負けじといい放つ。
「姫、今から姉さん呼んでもいいんですよ?」

他力本願名ところは情けないが、このタイミングではマズイのか、姫も慌てて謝る。
「ゴメン、ゴメン。本当に感謝しているわ。ありがとう」

「まったく調子がいいんですから…。今日も城下町に出かけるんですか?」

訪ねるレイに姫は首を縦に振りながら答える。
「ええ。新しいお店が出来たって話を聞いたの。いつもの時間までには戻るわ」

「分かりました…。いつも通り迎えに行きますので、遅れないで下さいね」
ため息をつきながら答えるレイの様子も、何度も重ねたいつものやりとりである。

「ありがと。おみやげ買ってくるわね〜」

手を振りながら抜け道の方へ駆けていく姫をみながら、レイはまた一つ、ため息をつく。
「まったく、誰に似たのやら」

呟きは誰の耳にも届かず、ただただ壁に吸い込まれていった。