哀・らぶ・優



「どういたしまして!」

男の子は笑顔を見せ、行くべき方向に歩きだした。
駅に向かうのだろう。
お父さんのお迎え、かな?
とても小さな笑顔は、誰かに似ている気がした。

くれた傘を開かずに片手に握り、自転車をこぐ。

“やまない雨はない”
なんてありきたりな言葉が私の胸によぎる。

たかが1つ、恋を失っただけだ。
私の身に起きた事は、たったそれだけの事。
“失恋”なんて、たった2文字の出来事。
そんな事だけでこの街を去るには、この街は魅力的すぎる。
今は無理でもきっと、この街でまた私は恋をする。


先の事はこの雨があがったら考えよう。
雨が上がった頃きっと、私の気持ちも整理がついているはず。
遠くの方の明るい空を見て、ふとそう思った。




  #7 end.