「なんてね。
俺、誰かと付き合う気ないんだ」


あたしより先に口を開いたのは、ハルだった。
悪びれた風でもなく、平気で言う彼の態度にあたしの中で何かが切れた。


「そう。……行こ、千夏」
「え? 果歩?」


あたしは戸惑う千夏の腕を掴んで図書室を出た。
半ば引っ張るようにして、早歩きで教室を目指す。


何なの、あのすかしたような態度。
「付き合ってみる?」とか言って付き合う気はないとか。
出逢った時から思ってたけど、絶対からかわれてる。

ずんずん歩くあたしの後ろで千夏が口を開いた。


「果歩、珍しいね。感情むき出し」
「だって! すごいムカつくんだもん」
「確かにね。あたしも正直イラついた」
「でしょ? あたし絶対からかわれてるよ」
「うーん……。ね、午後さぼっちゃおうか?」
「え?」