いつもと変わらない健の様子に、次第に肩の力が抜けていく。

おそらく、健も自分以上に頑張ったのだろう。

そう結論づけると、竜馬は体の内から次こそは負けないという闘志のようなものが沸いてきた。

「健、やったな」

「ん? 何が?」

「ほら、あれ」

 竜馬が指差す方向を見て、健は目を細めて満足そうに頷いた。

「俺って、すごくね?」

「ああ、すごいすごい。でも、次は僕が一番を奪ってやるよ」

「おっ、言うねー。まっ、俺もそうそう首位の座を譲るつもりはないけどな」

 ニヤリと笑いながら竜馬の肩に腕を回した健は、ふざけながら軽く竜馬の首を絞めた。

おそらく二人がこんなに密着したのは初めてのことだろう。

竜馬としては、友達同士でこんな風にじゃれあうことすら初めてのことだったので、素直に嬉しい気持ちになっていた。

だけど、何かしらの違和感のようなものも感じていた。

何かがおかしいという思いはあるのだが、それが何なのかがわからずただ首を傾げることしか出来なかった。

 二学期の中間テストでは、健に大きな差をつけられてしまった竜馬だが、逆にそれに発奮してますます勉強に打ち込むようになった。

そして、運命の二学期末テストが催されることになった。

 中間テストでは、健は一位だった。

だけど、すべてのテストで満点を取ったわけではない。

だったら、自分が健の上を行くためにはそれを実行すればいいだけのこと。

そうすれば、最悪、健よりも順位が下になるということはないからだ。