「由依、そのくらいにしときな」


諌(いさ)めるように言って震える肩を掴んだのは紫水。


「嫌だっ!!☆」


激しく頭(かぶり)を振って嫌がるが、必死の抵抗もむなしく引き離されてしまう。


縋り付くようにしてこちらに伸ばされた指先が空を掠める。


それが、ひどく悲しくて……。


自分から駆け寄ればその手に触れることができるだろう。

だけど現実の私は動けずにいるのだった。


――触れれば、また傷つけてしまう。



「奏」


『……っ!?』


肩がぴくりと跳ねる。


名を呼ばれた。

“光”ではなく、“奏”と……。


『な、に……?』


半ばぼんやりとした意識の中、問う。


「こうなったら、もう曖昧なままにしておけない」


そう言いながら紫水はさして苦労している様子もなく、腕の中で由依を御している。

力が強いのではない。

押さえ込む術を持っているだけの話だ。