目が覚めると、僕は部屋にいた。パジャマまで着ている。あれは夢だったのか。
 僕は、男の子の事を思い出していた。あの子の名前を聞いて――、其処までしか思い出せない。名前も、思い出せなかった。
 あれは夢だったのだろうか。それにしては妙に鮮明で、そして繋がらなかった。男の子の名前を聞いてから今までの記憶がすっぽり抜けている。
 僕は一体――。
 ベッドサイドテーブルに置いてある携帯を取って開けると、時間は二時を回っていた。真夜中だ。誰も起きていないだろう。
 立ち上がって僕は電気を点ける。そして学生鞄を開けた。中を調べると、明日の時間割が揃っている。ノートを開いて中身を見てみても、明日の予習がされていた。
 これは夢なのだろうか。時間割をしている今の夢、タイムスリップしている昔の家――。
 頭に可笑しな病気でも患ってしまったのだろうか。僕は少々自嘲気味に笑んだ。
 どうにかしている。
 そして有り難い事に、僕はこう云う場合、どうしたら良いか知っていた。持っている知識と経験から。それはもう一度寝る事。
 朝になれば、全く正しい事になるかもしれないし、何か分かっているかもしれない。それにこれが夢だったと云う事になっているかもしれない。
 僕は電気を消す。それから、一応念の為に携帯のメモ帳機能を呼び出した。夢ではない、と打って保存し、僕は携帯を閉じる。
 これが夢なら携帯のメッセージは消えているだろう。そして、これが現実なら携帯のメッセージは残ったまま。
 携帯をベッドサイドテーブルに置いて僕は布団に潜る。どうか、これが夢でありますように。それか、あの男の子が夢であるように。
 段々、瞼が重くなる。どうかこれが夢でありますように――。