林、だ。林がある。こんな所に林があったなんて知らなかった。子供の泣き声はこの林の中からする。
 迷子になってしまったのだろうか。それとも――。僕は頭に浮かんだ嫌な考えを振り払いたくて林の中に入った。
 奥に、奥に。林にしては木の数が多いく、まるで目隠しでもしているようだ。
 と、煌めくものが木々の間から見える。池だ。その辺で、小さな男の子がうずくまっていた。
 僕は男の子に駆け寄ると、手を差し出す。
「大丈夫?」
 男の子は顔を上げた。見た事のあるような顔だ。恐らく、近所の子だろう。
「どうしたの?」
 僕は聞く。男の子は答えた。でも、それは男の子の年齢にしてはいやに明瞭で。
「お姉ちゃん達がいないの。」
「一緒に捜してあげるよ。」
「だって――。」
 男の子はまた泣き出す。こんな小さな男の子を放っておいて。この男の子の姉は何をしているのだろう。
「お名前、教えてくれるかな?」
 名前さえ分かれば何とかなる。また、男の子は答えてくれて。
「■■■。」