「・・・。」
「あんな最低男のために人生を棒に振る?」
「・・・。」
 わからない。そんなこと、わからない。
 死ねばいい。あんなヤツ、死んで当然だ。だけど。
 そんなふうに言われたらわからない。
 パパ。ママ。私、どうしたらいいと思う?
「後払いでいいかな?」
 私が顔を上げると、レイノは私に袋を差し出した。たくさんの宝石が入っている袋を。
 私は一生懸命首を振る。だって、まだ売るって決めてないし、それに私が持っていたって宝の持ち腐れ。
 だけどレイノはむりやり私に袋を持たせる。
「一年間。考えてください。」
「でも私、売るかどうかなんて――。」
「売ります。」
 レイノは微笑んだ。美しい。だけど気持ち悪い。
 全てを見透かしている、私のことは全て知っている、と言うようにレイノは笑う。

ピピピ

 あ、メールだ。
「失礼します。」
 私はケータイを開く。着信一件。開くと、歩――弟からだった。歩のメールは簡潔に、一言だけ。

ばあちゃんがたおれた

 パパとママが死んでからずっと私と歩を育ててくれたおばあちゃん。もし、おばあちゃんがいなくなってしまったら――。
 怖い。どうやって歩を抱えて生きよう。
「売ります。」
「ありがとうございます。」