あたしの言うアイツは野村のことだ。明るくて顔もよくてクラスの人気者。だけどあたしのストーカー。
 野村の頭だったらもっと上の高校にも行けたのに、あたしにストーカーするためだけにこの高校に進学した。
 そして、あたしとリクは出会って、リクと野村は出会って。
 リクが野村を知らなかったころ。あたしとリクはすぐに意気投合した。笑いの趣味も合っていたし、共通の趣味が幾つもあったからだと思う。
 そしてリクが野村を知ったある日。あたしはリクに言った。一緒に野村を殺そう、と。
 あたしはリクに全て話した。野村にされたことを全て。
 するとリクは少し、悲しそうな顔をして頷いてくれたんだ。一緒に殺ろうって。
 あたし、絶対に気色悪い。狂ってる。なのに、リクは黙って聞いてくれる。
 洗面所に入ると、あたしはドアをガムテープでがちがちに固める。磨りガラスも、ガムテープで塞ぐ。
 そうしないと、アイツに見られてしまう。
 いつも感じる、まとわりつくような気持ち悪い視線。あんまりに長い間続いていて、時々、忘れそうになってしまう。忘れられればどんなにいいか。でも、忘れられない。
 シャワーを浴びているこの瞬間にも感じるアイツの視線。全て、塞いだのに。
 だからあたしの入浴時間はいつも10分。それ以上でもそれ以下でもない。自然とそうなってしまう。
 見られている。
 寝ている時も感じる。見られている。
 無言電話もある。あたしの写真も送り付けてくる。
 24時間ずっと、アイツに見られているんだ。
 殺したい。早くアイツを殺して楽になりたい。
 でも、ずっと殺す方法は決まらない。ずっと考えてるんだけど、全部バレそうで。でも、一刻も早く殺したくて。
「死んでくれ――。」
 カシャリ。シャッター音が聞こえる。気のせいか。現実か。わからない。
「リク――。」
 助けを求める。だけれども、当然リクが気付いてくれるわけがなくて。
「リク。」
 限界。助けて。あたしは一体どうしたら良いの。