「だめ!」
 愛姫がその場に座り込んだ。両手でその美しい顔を覆って大泣きする。むせび泣く声だけが聞こえた。鳴咽に混じってだめ、だめ、と言う声が聞こえる。
「愛姫。」
 一体何がだめなのだ。柚姫がいるかもしれないというのに。
「・・・。」
 絶対愛姫は僕が林の中に入るのを許してくれないだろう。きっと柚姫はあそこにいるのに。
「他の場所を探そう。」
 僕は愛姫の手を引いて色んな場所を探した。公園、溜池、ダム。とにかく、水のあるところを。
 だけど柚姫は見つからなかった。
 夜遅くになり、愛姫を家に送っても、柚姫は帰っていなかった。
 柚姫。どこにいるんだ。
 愛姫を送り届けた後で、僕はあの林の中に柚姫を探しに入る。でも、池は見つからなかった。