書物や歴史が真実だけを語ってるとは限らない。

嘘、偽りが記され語られていてもそれすら調べることさえ今は叶わない。

人間は都合のいい様に物事を進めたがる生き物だ。

本当のようで嘘のような、そんな物語――――・・・




その日、一人の男が処刑されることが決まった。

男の名は、『霧小路 亜仙(きりこうじ あせん)』。

彼はすべての寵愛と恒久な平和を望む、そんな男だった。

自然を愛し、生き物を愛し、争いごとを好まない彼がなにをしたというのか…


「これよりこの最重罪人の処刑を決行する。」

それは無慈悲をも感じさせる、公開処刑であった。

民衆が集い、見せしめかのように…言葉の通りだった。

「この天正寺芳影(てんしょうじ よしかげ)直々に処刑を執行するなど… 
身に余る光栄ではないか、亜仙よ。 
お前のことは一目置いていたのだがな。こうなっては仕方あるまい」

亜仙のとなりに立っている男がそう言い放った。

もう亜仙には抵抗する力も残ってなく、ひどく衰弱した様子だった。

「さあ、罪人よ。決行時間まであと1分を切った…
 なにか言い残すことはないか?」

「ふっ、そういう時間はもらえるのだな。」

この状況にもかかわらず笑みを浮かべた。



「愛すべき者に…残したい言葉がある…。」



衰弱している身体とは裏腹に力強く亜仙は思いのたけを叫んだ。

「俺は死に恐怖はない。
道がここで途切れようとも それを拾ってくれる者がいる。
それだけで俺の死は意味のある物になる。
しかし、望まぬ未来が確立されたほうが妖気が漂って仕方が無い…」

「己の信念を貫き通せ!
なにが遭っても迷うことを許すまじ!
揺ぎ無きその道を辿ってくれ!





Not finis via...」