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胸のうちにしまっていたことをすべて吐き出して安心したせいか、芍薬の頬に一筋の涙が流れる。

「…昨日のような今日が来て また今日のような明日がくる…この繰り返し。生きる意味が見当たらない…あたしに素直に笑っていられる道なんてないのよ」

芍薬は弱々しく、流れる涙にも気付かず笑ってみせた。

よほど辛かったのだろう、と悟れる。

肌蹴た着物がよりいっそう彼女を健気に見えさせる…


「芍薬さん…」

「…」


「少し話しすぎたわ。いくら頑張ったってどうにもならないことばかりなのよ… だか
らここは潔く諦めたほうがいいかもね。脱出口は教えるからあなたたちだけでも…」

「そんなことを言ってるんじゃないんです」

亜一が言い放った。

芍薬を自分の思いをぶつけるかのように目を強く向けた。

「僕たちだけが逃げただけで芍薬さんは…芍薬さんはまた日の当らないところで過ごさなくちゃいけないじゃないですか!
それなら勇気を出してここから抜けだそうとする道を選んだほうが、きっといい未来がまってる…。
さあ、芍薬さん決めてください。 また鳥篭の中でもがくか、自由へと羽ばたくか…」

「あたしは…あたしは・・・」

場にしばらく沈黙が流れる。

このほんの数秒の時間の経過がものすごく長く感じさせた。






「…出たい!! ここからあたしを連れ出して…!!」






沈黙を破って芍薬が思いのたけを叫んだ。

煉瓦でできた牢とは思えないほど響かせた。



軽くほほ笑んだ亜一は決心の眼(まなこ)で芍薬を見た。



「わかった」



「よし、じゃあいっちょ暴れるか!!
ちょっとお前ら離れてろよ…」

そういうと絃竜は拳と拳を打って力を込め鉄格子に向けて振りかぶった。

「ちょ… 絃竜もしかして…」

凄まじい轟音とともに鉄格子の一部分が破壊された。

「どうよ。ざっとこんなもんだろ」

「す、すごい…。これなら外へでられるわね」

3人は牢の外へとでた。