「あたし、両親に売られたのよ。 8歳のときに」



――…・・・

両親は共に遊び人で毎日朝早くに出かけては夜遅くに帰ってきていたわ。

お金もそんなにある訳でもなくて、決して裕福な生活でもないのに、「増やすためだ」と
か言って賭博とかしてたかな。

負けて帰ってきた日には、機嫌が悪くてあたしを見るなりに八つ当たりした…

逆に勝った日にはすっごく機嫌がよくてそれこそなにもされなかったけど、あたし為には一銭も使ってくれなかった。

母は光物とか着物に。父は酒と女に使っていたわ。

最悪な日なんて2人して喧嘩してた。



お金のこともそうだけど、

父は母におしゃれしすぎだ、とか

母は父に女と一緒にいたことに対してとか。

それを毎回聞かされるあたしの気持ちなんて絶対考えたことなんてないはずよ…




そんなある日一人、背中に蝶一文字を背負った男がきたのよ。

まるで蝶が蜜を持ってくるかの様な甘い匂いを漂わせた男だった。

あたしはめったにない来客に必死に手を伸ばそうとしたわ…

この機を逃せばもうこの生活からは逃れられない、と。



『幕府の人間だ』とかなんとかいってこういったわ。

『"それ"を俺に売ってくれないか?』ってね…

その男はあたしを"モノ"としてしか見ていなかった。

最初、両親はあたかもあたしをいままで"普通"に育てきたかの用に『無理』だなんて答
えた。

すると男は手にしている風呂敷からお金をだしてこうかえしてきたわ。

『この金でどうだ…?ざっと5000両はあるぞ。 ずっと遊んで暮らしていくには十分
であろう…?』

この返事に両親は目の色変えて即答した。

答えなんて見えていたわ。




『喜んで』



願っても無いのに2人は口をそろえて言ってたかな。

結局両親もあたしを"モノ"としてしか見ていなかったのよ。