「亜一は譲ちゃんから護ろうとしたんだよ…な?」
亜一はコクリとうなずいた。
「あんなことでやさしい人ぶらないで…!! そういうの迷惑なのよ!!」
「っ!? そんな言い方ないだろ」
「いや、いいんです。 勝手に助けようとした僕が悪いんです」
少し口論になりつつありながらも冷静に対処する亜一だが、それでも遊女は不満がおさまらない様子。
「結局こんなとこ入って… どうしてくれるのよ」
「事態が事態になってしまったし… もう一度キミを助ける」
その瞬間遊女の手が素早く亜一の頬に触れた。
直後に大きな衝撃音とともに加速させた腕でその頬を引っぱたいた。
「軽々しく"助ける"なんて言わないで…!!」
亜一は一瞬頭の中が真っ白になった。自分のやろうとしていることて否定されているのだと。
「ここから抜け出そうって言ったって無理なのよ! あのオーナー…そしてあの用心棒がいる限り…
ここから出るなんて不可能なのよ! いずれ貴方たちは殺されるに違いない…」
だんだんと感情があらわになる遊女。
「何度も何度もここから抜け出そうと考えた… でもあの用心棒がいつもいて…
その身をもって知ったはずよ、アイツの強さを…」
「そんなこと関係ない。僕はキミを護りたい。だからもう一度キミを助ける」
潔く言った亜一に驚きを隠せない遊女。
「なるほど…じゃあこの遊郭のために雇われてるやつならここを支配してるやつを倒せば大丈夫じゃないのか?
用心棒が強いっていうことはオーナーは手薄なはずだ」
しかしあいにくにも全員武器を没収されている。
「あなたたち… ここは幕府の占領下よ? 騒ぎを起こせばただじゃ済まされないわ… それでもいいの?」
「やるって決めたんだからやるしかないんです」
「じゃあ話すわ… 私が何故ここに"いる"かを…」
