夏の始まり

今年も暑い暑い夏がきたよ

◆◆◆◆

「れーん!!」

鈴は俺に飛びついてくる。

「なんだよ。」

「もう!今日は一緒にプール行こうね、って約束したじゃない。」

そうだっけ?

「今、絶対忘れてた。じゃあ、今日何の日か知ってる?」

ぅん、忘れられる訳ないだろ。

「今日は2人の「誕生日」

俺と声をかぶらせて、鈴は嬉しそうに笑う。
今日は7月7日。
家は隣、生まれた日も、病院も、血液型もなにもかも一緒。
毎年2人の誕生日にプレゼントを交換するのが毎年の行事。
鈴がしつこく言ってくるからなぁ。

◆◆◆◆

「今日は一緒にプール行ってくれてありがと。」

鈴は俺の頬っぺたにキスをする。
鈴はクラスで1番可愛い。
いや、学校でも…。

◆◆◆◆

「明日、合宿行ってくるから。3日後の夕方には帰ってくるから。そしたら、夏祭りに行こうね。」

「分かった、分かった。」

「これ、私のお守り。帰ってくるまで預けとく。」

渡されたのはネックレスか何か。
そして唇にキスされた。
毎回毎回、女からって。

鈴は世界で1番可愛い。
いや、宇宙でも…;



◆◆◆◆

その日も暑い暑い夏だった。

たくさんの黒い服の人達。
小3の俺にはとうてい理解できなかった。
そこに寝ているのは鈴?
もう起きないの?
「廉」って俺の名前を呼んでよ。
その柔らかい唇でキスをして。
俺と鈴はずっと一緒じゃなかったの?


◆◆◆◆

鈴が俺の隣からいなくなってもう10回目の夏だよ。
俺は鈴が忘れられなくて、鈴は俺の最初で最後の恋。

今日もきれいな雲1つもない青空。
「鈴、今年も来たよ。」
俺は鈴からあずかったパワーストーンを鋭い陽の光にかざしてみる。

「鈴…。」

(完)