「やだな~、オレとお前の仲だろ? そう恐い顔すんなって」

 瞳孔が開かんばかりに殺気立っているフーリオに対し、へらへらと笑うルベル。段々と近づく二人の距離に、心臓はバクバクと音を立てていた。

 ポンッとルベルがフーリオの肩に手を置いたかと思うと、フーリオはそれを素早く払う。

 それに対して、からかうような素振りを見せたルベルにフーリオは益々苛立っているようにも見えた。


「エマ、戻るよ」

「え、あ、はい」

 ルベルを無視することに決めたのか、フーリオは乱暴に私の手を取る。

 この気まずい雰囲気の中、拒否する事など不可能に近くて、ただ焦ったようにして返事するしか出来なかった。

 骨が折れてしまいそうな力で、きつく抱き締められた私は小さなうめき声をあげてしまう。素早く唱えられた呪文により、またも気持ちが悪くなった胸の中で必死に堪える。

 視界がぐるぐると回る中で抱きかかえられた私は、最後にあの下品なお兄さんの笑い顔を見た気がした。