「うひゃ、あっつー」
洗い場から一番近かった浴槽に足を入れてみると、熱めのお湯が足に伝わる。
気合、気合、と我慢して入ってみたけれど、案外気持ちが良い。ぷかぷかと浮く感じが心地よくて、汗をかいてしまうほど長湯してしまった。
流石に暑くなってきて、浴槽から上がってみるものの。一度火照ってしまった体は、そう簡単に冷えてはくれない。
浴槽に足を入れたまま視界を動かしてみると、外へと通じる引き戸が目に入った。
看板には『屋外風呂』と書いてあるので、間違っても町に出てしまう心配はないだろう。
「涼めるかな」
元から気温の高い町でも、浴室よりはマシのはず。タオルを持ちながら、足早に引き戸へと近づくことに。
戸を引いた瞬間。気持ち涼しい風が火照った体を撫でる。
湯気が立ち込める中、ほとんど何も見えない状態で私の目に飛び込むのは、謎の青い物体。何だろうと思い、塀のギリギリまで近づくと、それは途方もなく大きいものだと分かった。
「青い――なんだろ」
「海、じゃね?」
「へー、海かぁ。……!?」
デジャヴか何かだろうか。独り言になるはずのものは、またも成立しないはめになる。
聞こえてきた声が低く聞こえたのは気のせい。本当は可愛い女の子。
そんな風に思いながら、恐る恐る振り返ってみるものの。私の願いは粉々に砕かれてしまう。
