キミのいる世界で


 会計の終えた服を手渡されると、強制的に試着室へと背を押される。

 ふとフーリオを見上げれば、いつの間に着替えたのか。彼は既に、薄手のローブへと変貌を遂げていた。

 
「着替え終わったら、ここで待ってて。宿を予約してくる」

 カーテン越しにそんな声が聞こえ、私が返事をする前に声の主は店の外へと行ってしまう。

 少しせっかちな彼の声が頭で木霊する中。露出過剰で着方がよく分からない服を前に、肺にある空気を精一杯吐き出した。

 逃亡云々よりも、こっちの方が精神的にきついと思うのは私だけ?


 腕を通す穴が分からなかったり、お腹が出てしまうのを阻止しようと頑張ってみたけれど。ちゃんと人並みに見えてるだろうか。


「あー、恥ずかしっ! もうこんなの見られたら――」

 勢いよくカーテンを開けて、独り言になるはずだったものを口にした。けれどそこで、周りをよく見るべきだったと後悔。

 何かの冗談かと思うタイミングで、黒いローブと目が合ってしまう。

 長い沈黙。

 全力疾走して消えてしまいたい。