小さな悲鳴が出そうになるのを押さえつつ、次々と出てくる魔法陣を目で追っていると、それは次々に兵士達を取り囲んでいく。
もう既に、逃げてしまった人もいるだろう。その人数が少ないということはないはずだ。
魔法使い狩りと称しているからには、常に魔法使いから忌み嫌われていても仕方ない。
それはフーリオ・クレイントンも同じらしく、一瞬の静寂が流れたと思えば。今までの轟音よりも、もっと恐ろしいモノが現れた。
黒っぽいローブを羽織り、全くと言っていいほど顔の見えないその姿は、異質以外のなにものでもない。
余裕ある足取りで近づくその様子は、先ほどのエヴァン様とよく似ているけれど、その雰囲気は同じと言えない。
「……エヴァン・オーデン。今日でお前との因縁も最後にしてやる――!」
ゆったりとしていたはずの魔法使いは、左手を前に突き出すと、苛立ちや憎悪がこもった声で静かに叫んだ。
彼の手を取り囲むようにして現れた魔方陣は、明るい紫から赤に変化する。
古代の文字か何かだろうか。
魔方陣へと徐々に書き込まれていく謎の文字が、全て書き終えられた時。それは小さな光の玉になり、エヴァン様の元へと一直線に飛んでいく。
彼を取り囲んでいる兵士達が、身を呈して彼を守ろうとするが、いくら丈夫な鎧を纏っていたところでとても敵いそうにない。
そんなことが一瞬にして脳裏を駆け巡っている間にも、雷のような光の物体はエヴァン様と鼻と目の先。
もう当たってしまう……!!
頭の中で最悪の未来予想図が浮かんでしまう中、思わず目を瞑ってしまうと。まるでガラスが割れるような音がして、その場に突風が巻き起こる。
何が起きたのか、まだ訳のわからない状態で目を開ければ、遠くに見えるエヴァン様の周りに水色をした障壁。
辺りには小さな砂嵐が巻き起こり、目を開けるのも辛く、微かな気配のみを頼りに周りを見渡せば、フーリオ・クレイントンは次なる攻撃を仕掛けたことを察する。
