「あなたには、私から直々に備品を差し上げましょう。これで正式に『マギ討伐隊』のメンバーです」
優しげに細められた目と共に、薄く開かれた口からはそんな言葉が紡がれた。
そしてそれとほぼ同時に、私の手の中には制服やら魔道具やらが現れる。
ほぼ無音の状態で出てくる魔法というのは、やはり心臓に悪い。素敵な演出に感動した素振りを見せつつも、チキンなハートは未だにビクついている様子。
それにしても、肩に手を置く必要はどこにあったのだろう。周りの冷ややかな視線や、言いようのない気まずさでパンクしてしまいそうだ。というより、してもいいだろうか。
「あ、ありがとうございます。今後は――……」
早くその場から離れたくて、視界を泳がせつつもお礼を言おうとした、その時だった――
突如として、正門の方から轟音が轟く。
大きく視界が揺れたのも、それが原因だろう。
ざわつく新人隊員達。正門から微かに聞こえる、悲痛な悲鳴。
こんな状況でも物怖じしなかったのは、エヴァン様を含む腕の立つ魔法使いや兵士のみ。
先ほどの兵士達と違い、格段に強そうな雰囲気をもつ兵士達がエヴァン様の側で身構えていた。
「エ、エヴァン様! お逃げください! フーリオ・クレイントンが――」
止むことのない破壊音が遠くで鳴り響く中、中庭を見下ろすようにして一人の兵士がそう叫ぶ。
けれど、それが彼の最後の言葉となってしまったようで……背後に現れた魔法陣に包まれるようにして消えてしまった。
