少し重めの扉を開いた先には、数え切れないほどの人。
ちょうど静まっていた時に入ってしまったのか、皆一斉にこちらへ振り返る。
パッと見ただけでも、怪訝そうな顔をしている人がいたり、驚いたような顔をしている人がいたりと十人十色。
遥か彼方前方で、新人隊員に魔道具や制服を渡していた人ですらも、時が止まってしまったかのように驚いた顔をしていた。
悪夢のような状況に、ばつ悪そうにしつつも列の最後尾に並ぼうとすると。
「き、きみ!! 式に遅れるとは何事かね!? だ、誰か、この子を捕まえなさい!」
突如、後方からそんな叫び声が聞こえてくる。どうやら声の主は、新人隊員の指導係らしく、そんな名札が胸元で輝いていた。
面倒な人が出てきたなぁ……、と心の中で悪態をつきつつも。言い訳をしようと近づけば、何処からか沸いて出た兵士達に後ろから羽交い絞めにされてしまう。
両腕を後ろで固定され、金属部分が皮膚の柔らかい部分に当たっているのか、少し痛い。けれど兵士や指導係はそんなことを少しも気にせず、まるで品定めするかのような目つきでジロジロと舐めるように見てくる。
遅刻如きでここまで酷い仕打ちとは、思いもしなかった。
文句を言おうにも、悪いのは自分自身。少しの間の我慢か、と目を伏せていると。
何の前触れもなく、その場の空気を裂くようにして――前方にある祭壇の更にその奥、日陰になっている場所から厳しめの声が聞こえてきた。
「――何をしているのです! その方を早く放しなさい!」
