「エマ・オルブライトで間違いないな? 確認が取れた。通れ」
腕の上へと表示された写真に触れ、確認すべき情報を得た兵士はそう言う。
それに対し黙って頷けば、大きな門は地響きのような音を立てて開いた。
ゆっくりと開く扉の隙間から見えるのは、ざっと十数人の兵士達。正門の前にいた兵士と同様、重そうな鎧を身に纏っている。
きっと、任命式は奥の方で行われているのだろう。
通路の先にある扉の中からは、先ほどと変わらずに鳴り響く、ファンファレーの音。
『急ぎたい』という気持ちと『怖い』という気持ちが交差する中、通路へと真っ直ぐ視線を合わせれば、少しだけ足が震えた。
今まで遅刻した人の例はない。従って、私自身もどうなるか分からない。
けれど、今更何を考えたって仕方ない。今はもう、何も考えないで前だけを見よう。大丈夫、全て……上手くいく。
まるで自分に言い聞かせるように。
何度も、何度も、そう唱えて。
――私は、扉を開いた
