表通りに出てからも、暫く走っただろうか。確実に男達を撒いたくらいのところで、私達は立ち止まった。
時刻は午後1時48分。小さいながらも、姿だけは確認できる場所にある「マギ討伐隊」の本部を尻目に、小さくため息をついた。
「……先ほどは助かった、礼を言う」
絶望の淵で項垂れている私の隣からは、子供の声に不釣合いな、やけに大人びた口調のお礼。
ビックリしたように、声の主へと顔を向ければ。
フードを被っているおかげで、鼻から口までしか見えない少年の顔が拝めた。よくよく見てみれば、まるで魔法使いのような格好をしている。
先ほど男達が言っていた指輪というのは、左手に何個か着けている物を指していたのだろう。皮手袋の上にはめられたソレは、確かに高そう。
…………。
――何故こんなに悠長に構えているんだ、私。
心の中で自問自答。
とことん緊張感のない自分に嫌気が差したが、いつまでも心の旅をしているわけにもいかず。わざわざお礼を言ってくれた少年の頭を、ポンポンッと撫でみた。
すると本当に僅かな変化だけれど、その口元は小さな弧を描く。喜んで……いるのだろうか。
「……んー、では少年! 私はこれから大事な用事があるから、ここでお別れね。今度は絡まれないように気をつけるのよ?」
ふぅーっと大きく深呼吸をした後。そんなことを言ってから、少しわざとらしいと思える動作をする。
そして、ズイッと人差し指を少年の顔まで突き出せば、まったく予測していなかった行動を取られた。
