キミのいる世界で


 少年の顔まで、あと少しというところまで迫った指。


 何か武器のようなものはないか、急いで持ち物を確認してみるものの。

 任命式の後ならまだしも、現段階では使えそうなものなど何一つない。

 唯一使えそうなものと言えば、すぐ側に落ちている拳ほどの大きさを持つ石だけ。
 
 本来ならそんなものを人に投げつけるなど考えられないが、既に首を掴まれている少年の姿を見るや否や、後先なにも考えずにソレを男へと投げつけた。

 

 ゴンッと鈍器で殴りつけたような音を響かせたそれは、男の脳天にヒットする。それが幸いしてか、少年からは離れたものの。

 こめかみから大量の血が出てしまった男は、殺意の込もった瞳で私をにらみつけた。そしてそれとほぼ同時に二人の男は、一斉に私の元へと飛び掛ろうとする。


 今度こそ絶体絶命……!


 そう思い、目を見開いたまま身体を強張らせると――……
 よほど運がないのか、男達はいきなり目前で派手に転がった。

 まるで魔法のような状況に、ただただ口を開けたまま唖然としていると。何時の間に移動したのか、男達の側にいた少年が私の手を掴んだ。

 何をするつもりか分からず、呆けた様にポカーンとしていると、有り得ない力で上へと引っ張り上げられる。

 それにつられて、転びそうになりながらも急いで立ち上がれば、半ば引きずるようにして出口まで手を引かれた。