「今日で、ちょうど百年目だ」

 カレンダーの印をみた私は、ポツリと声を漏らす。

 それは誰に聞こえるでもなしに、窓の外へと溶け込んでいった。

 視界に映るのは、煌びやかな光が描く放物線と大きな音。お祭り騒ぎとはまさにこれを言うのだろう。

 この世界で迎えるお祭りは、もう何度目か。

 外から聞こえる楽しそうな声や、砂糖菓子のような甘い香り。少しだけ下を向き、小さく笑ってみた。


「なんで、こんなに切ないんだろう」

 きつく握り締められた左手には、シルバーの指輪が光り輝く。そこにポタリと落ちた雫は、地面へとゆるやかに落下していった。

 小さな染みになった雫も、まるで幻だったかのように消えていってしまう。

「――何か大切なことを……忘れている気がする」