「って……ぇ、んにすんですか!」
「一昨日のお返しだよ一昨日の。マジで歯痛かったんだからなー」
頬をさすり起き上がれば、視界を埋めていた青空に太陽が差した。
にかっと万人に愛されるのであろう竹谷先輩の笑顔は、俺には眩しくて、藤野くらいがちょうどいいなと、寂れた蛍光灯を藤野に重ねた。
きっと俺は、それに群がる数いるかげろうの内の一匹でしかないのだろうけれど、最早それでもいいと思えてしまえるのは、俺が相当藤野に惚れ込んでいるからなのか、それとも藤野と俺の間にある、決して埋まることのない溝のせいなのか。
もうわからない。
朝練の終了を呼びかけているコーチの声がだんだんと遠くなる。
気がつけば校庭には器具を片付ける一年生と俺と竹谷先輩だけしかいなかった。
