「もうさ、聞かなくても見ればわかるんだけどさ、一応聞くよ加藤。今度は何した」
「ハンカチ破れちゃった☆」
「全然可愛くなんかねぇんだよ畜生」



あーあ、原田に貰ったハンカチが分裂してしまった。

あれ、ハンカチって細胞分裂できたっけ。


加藤の手から戻ってきた二枚のハンカチを鞄に押し込んで前を向く。

あと五分でこの授業も終わりだ。
すでに佐々木先生は雑談に入っていた。


隣で、「ねー、シャーペン貸してー」と間延びした声を発する加藤はもう無視することにする。


「私のシャーペン壊したの誰か分かってんのか」
「さぁ、誰だろうね」



にやりと笑みを深める加藤を、私が視界にとらえることはなかった。






そして君はいつものように空惚けた。