冷凍ご飯をチンして、おにぎりをひとつ作ってやる。

「あざーし!」

「あざーしって…」



お礼らしき言葉を漏らしたリクは中身も聞かずに大きな口で頬張り、ロクに噛まずごくんと飲み込んだ


「美味しい…あと2コでしあわせ」

「遠慮って何かな」


上目遣いな彼に、仕方なく晩ご飯の残り…酢豚とその辺にあった惣菜パンを渡すと、彼は私を窺い見たあとに両手を合わせた

「いただきまっす。」

「どうぞ。」





特に話すこともなくなったので、カチャカチャと彼のお箸の音が響いた


「久しぶりに手料理食べるなー水ください」


彼の指す「久しぶり」がどのくらいの期間を表すかはわからないが、すごく訳アリっぽい。なんやかんやで犯罪とかしてたりして?

ふと頭をよぎった最悪なシナリオを消し去るように水をテーブルに置く


私の脳内など知る由もなく、彼はふと箸を止めて私を見た


「あ、」

「?」

「おねーさんの名前聞ーてねぇな」

「…言ってなかったっけ。みさき。山岡みさき」

気がついたら答えていた



「みさきさん、って呼べばいー?」

「お好きにどうぞ、今日だけでしょ」


なんでこんなことになってるんだろう
知らない男の子と部屋で2人きりなんて、おかしいだろう…自分。