はっ、はっ、

苦しそうに短く息を吐く動物は、一ヶ月前と変わらぬあの狼だった。


「…ダイジョブ…?」


口がきけなくなった元人間は、静かに首を縦に振る。
すごい、ちゃんと言葉は分かるんだ…脳ミソどうなってんだろ

言葉が分かる、という点で急に安心しはじめた。とりあえず、そうだ、深呼吸しよう。

リクは私を申し訳なさそうに見つめていた。不安にさせただろうか。
頭をぐりぐりと撫でると、くーんと切なげに鳴く。

あれ…かわいい、かも



「…おいで」


彼が溶けて消えてしまったみたいに床に不自然に残る服を集めて持つ。リビングへ歩いていくと、無言で私の後を着いてきた。


「さて、一晩何しようかね」


服を畳む私の肩を暇そうにすんすんと匂うリクにデコピンして、首を撫でる。

気持ち良さそうに目を細め、今度は膝にすりよってきた
赤い毛並があり得ないぐらい綺麗。そりゃ普段はヒトなんだから、蚤とかの虫もいないだろうし…

こんなに大人しくて、綺麗で、賢くて…

「高く売れそうだよね」

がぶっ

「冗談です」


言葉が話せなくても意思は伝わる。咬まれた指をさすりながら、不服そうに尻尾を揺らすリクを呼ぶ。極力、ご機嫌を損ねぬよう。

「リク?」

くーん

「やっぱり、綺麗だよ」



言うと、リクは私の傍に座った。

どっからどう見たって動物だった。でも私にはちゃんと「リク」という生き物に識別できる。


「抱きしめていい?」

言うと、前足が私の腿の上にのった。そのまま首に手を回して抱き締める











a deep affection toward the wolf
馴れたシャンプーの香り