「(…あったけー)」

「ん……な、」

「あ、おはよみさきさ「挨拶すればいいってもんじゃないよ!?」


1か月前と同じテンションでポカッと一発殴られる。この前は眠っていたからベッドから落とされちまったけど、今宵は少し粘る。


「や、ちょ、離して…!離してってば!」

「やー」

「ヤーなのはこっちだ!」

藻掻くみさきさんに負けず、ぎゅっと抱きつく。すると女性特有の柔らかいものにふにと鼻が当たった。
やべ、と思って視線を上に向けると夜目でも判るほどにみさきさんの顔が赤くなっていて。




「ば、ば、ば」

「バッカーノ?」


浮かんだ言葉を口にしてみる。途端、頭を掴まれた。


「バルサミコ酢!」
「うぐっ」


頭突きを食らわされ、予想外の衝撃に呻く。みさきさんも痛そうだけど。


「…もう」

「え?」

俺の肩に布団をかけた暖かい手、そしてみさきさんの体がベッドの中心部からずずずと移動した。

俺は順当にみさきさんの空けたスペースに移動する。なに、そんなことしてくれんの?


「もー、みさきさんは相変わらず無防備ー!」

「リクくん?」

「すいませんでした!」

「満月の前は、鬱になるんでしょ…」


言いながら寝返りをうって、俺に背を向けた。