みさきさんは俺を受け入れた。
俺と言う人間だかどうだか分からない生き物と、一緒にいたいと
離れたくないと
そう言って、俺の手を握ってくれた。
暖かくて暖かくて、心臓に染み入るようなこの人の体温が、いつか俺が ずっとここにいたいと願わずにいられなかったあの時の安心感と重なった。
「みさきさーん…」
今日の月齢は14、明日はみさきさんに俺の体質をカミングアウトしてから初めての満月の夜。
とりあえず、今夜は夜這いをかけてみる。
みにくい獣の子
第15話
よく寝ているようです。
ターゲットの女性はベッドの上で寝息をたてて、肩まで羽毛布団にくるまり読みかけの本を枕元に眠っている。
みさきさんの寝ている間に彼女の寝室に入るのは2度目である。1度目に潜り込んだのは、ちょうど1ヶ月前の夜。
何故か満月の前日は人肌恋しくなる。端的に言えば性的欲求不満に近いのだけど、セックスという行為に限るわけでなくただ体を寄せ合うだけでも事足りる。ただ精神的不安で、寂しいだけなのかもしれない。
でも、そんな些細な欲求のせいで寝付けぬまま、じりじりと夜が更けるのを待っているのはあまりいいもんじゃない。慣れたことだけど、苦しい。
一度だけでいい、あの人を抱き締めたい。それだけで眠れる気がする、いや眠れる、うん。
「てことで…いただきます。」
深く眠る彼女の前で手を合わせて、食事前のご挨拶を述べる。
いやらしい?まさかあ。
そうっと布団をめくって、彼女の体を冷やさぬようにベッドに滑り込む。
小さくベッドが軋んだ音がしたけど、気にせず彼女の腰に手を伸ばした。