「いいよ、大丈夫だから言ってよ」

「うん…」

少なめの朝ごはんを終えて、また2人でソファーに腰かけて話の続きを始めた。

私の問いに頷いたものの、リクは私の隣に座ってごにょごにょと手を遊ばせている。


リクが「帰るところがない」と言ってここに来た理由を知りたい。しかし別に言いたくないなら言わなくたっていい。



「あー、無理ならいいよ?」

「や、別に大丈夫。みさきさんには言える」

「…うん」











みにくい獣の子
第14話













「その…親戚が死んでから3回目くらいの満月の夜…俺完全に意識飛んじゃったんだよね」

「ヒトとしての?」


そ。小さく頷いたリクは、酷く項垂れていた。


「俺、ベランダに出て、隣の家のベランダに飛び込んだんだ。明るくて、賑やかだったから。」

「え…」


彼の回想から、少しずつその状況が見え始める。

「寂しくて、1人で部屋にいたら、堪んなくなって。あんま覚えてねーけど、ちょっと意識が戻ってきた時には警察に追われてた。あいつらしつこくてさ」



「で、狼は法律で飼っちゃいけないし、警察が調べに来たら多分俺の部屋から証拠が出ちまう。だからもう家には戻れなかった。大事な荷物だけ持ってきて、あとは業者処分」


リクは、呆れたように頭を掻いた。


「誰かと一緒にいる時は、完全に抑制利かなくなるぐらい意識ぶっ飛ぶとか有り得ねェ。多分、親戚が死んで暫く…不安定だったんよね」


あの日、怪我をして私の部屋の前にいた理由。

苦しい思いをして、怖い思いをして、逃げて逃げて、私と偶然出会ったんだ。


私の記憶と疑問と事実が一本の線で繋がっていく