「なんか、ね、混乱してるみたい」

「だろうな。狼男とか、ぶっちゃけキモい」


キモい という若者言葉を耳にして、私の頭の中にフラッシュバックしたのは動物だった



「…ううん、
綺麗だったよ」




隣にいる男と、久々に目を合わせた。


「…」


リクは面食らったような顔になり、慌てて俯いて、自分の手元に視線を落とした。


「ただの、野蛮な生き物」


仕草のひとつひとつに、今まで見えてなかったリクがいた。目の前にいる男の子は、ずっと苦しい思いをしてきたんだ。いや、今も継続して苦しいんだろう。



「リク」

「…なに」

「朝ごはん食べようか?」


静寂を作るまいと、なんとか搾り出た一言はこれ。
赤い頭は視線を上げることなく、静かに縦に揺れた。









remission




波が止まった海のように