ウィン
と小さなバイブレーションの音。

ウィンウィンと断続的に鳴り続ける音に、眠りの浅かった私は夢の世界からじんわり引き戻された。
ああネズミーランド、久しぶりだったのに…夢の国…


楽しかった夢のことを懐古しながらケイタイデンワに手を伸ばして「リク」の二文字を見、何も考えずに通話ボタンを押した。


「なーによー…」

『あ、寝てましたよね…夜分遅くにすいません』


聞き慣れない声だった。完全にだれた声で応答した自分を後悔し、声を取り繕う


「…いや、大丈夫です。どちら様でしょうか」

『昨日昼間にみさきさんの家に伺った…リクの友人です』

「ああ、祐くんて子か」


確かリクは今夜この彼の家に泊まり込んでいるという話だった。
なんで君が電話してきちゃったんだよ…いたずら?


『少し、貴方とお話がしたくて』

「…なんだそりゃ」

『すいません、突然。でも今夜しかチャンスないんですよ。勿論、この携帯の持ち主についてなんですけど』

「は、はあ」

『みさきさんは、彼のこと…どこまでご存知なんですか?』


話が淡々と進んで、私には否応なしに祐くんとトーキングになっていた。

どこまで知っている?なんでそんな抽象的な疑問なんだ


「え、と…学生だよね?」

『それは、そうなんですけど。もっと彼固有のことは…』

「あー、精神的な…ってやつ?」

『ああ、乖離症状の話ですね』


祐という青年は、随分リクに入れ込んでいるように感じた。そっち系か…?友情つーより愛情か…?

てゆか私、ライバル視されてるとか!?
…あ、あり得る。


「他はあんまり知らないです。恋人同士とかじゃないし、さ」


祐くんがそっち系なのかもしれないという可能性にかけて、しっかりと恋愛関係に関して釘を刺す。
まあ、私の友人には堂々と恋人宣言しちゃったけれど。ああ、心が痛む


『では…差し出がましい質問になるのですが、』

「は、はい」