「いっくぞー」
鍵を開けていこうか、とも考えたが、もしも空き巣に入られたら笑い話では済まされない。やっぱりいつも通りに鍵穴を回した。
ドア前には僅かだが狼の血痕が残っていて、気が滅入った。早めに掃除しなきゃ、大家さんに追い出される。危ない人だと思われちゃうよ
階段を降りたところで、腕時計をしてないことに気づいた。
「げ」
携帯で時間を見て、時計のことは諦めて、駅への道を歩き出した。
1限に間に合う電車まで、あと15分。ちょっとギリギリかな…
信号の色が変わる。横断歩道をせかせかと渡り始める
「…ん?」
対向して歩く人の山の中で、昨日の狼を見た気がした。
いや、同じよな髪の毛の色か
「お~いっ」
…お ま え か!
赤茶けた頭の持ち主は、私に飛び込んできた。
「どこ行くんさ!」
「がっこ」
「…、今日は平日か!」
「ぼけてんの?」
ていうか、信号変わるから、ね。
横断歩道の真ん中で立ち話は無いだろう。とりあえず、私が来た道を戻る形で歩道に戻った
「あーちっと遅かったんさね…今日はどうしよっかな、学校」
しゅんとしたした彼の顔には擦り傷があった。ケンカしてきたのだろうか?いや、チキンレース?
「家帰ろ、リク」
「は?」
「あたし腕時計忘れたの」
「えー、学校いいんさ?」
「ほら、急ごう」
つくづく、彼に甘くなっている自分がいる。あーあ、遅刻になっちゃった。
「ごめんさ、ありがと」
リクは申し訳なさそうに私を覗き込んできた
「あのさ」
「んー?」
「携帯持ってンでしょ?」
Tell me your、
今の時代、ケー番とアド分かんないと不便でしょうがないのよ

