「たっけてー!」
「山岡さん、大丈夫かい!?」
「いや大丈夫じゃないですうう!」
何が悲しくてこんな夜中(推定2時近く)に狼に乗られてんの、てゆかなんなの。
ああもうリクは肝心な時にいない、そう言えばやっぱり帰ってきてない。ルームメイトの一大事だぞバカー!
涙目になってきたあたりで、ふっと急に体にかかっていた負担が消えた。
「わふっ」
短く狼は鳴いて、私の上から退いた。何事だ?思ったのも束の間、狼は私の顔を見、そして冷たいコンクリを蹴って走り逃げた
「え、」
「あ、待て!」
おじさ…いや、田中さんが声をあげた。狼は強烈なスピードで消えて行った。
「はあ…なんだったの、」
狼はあのままいなくなってしまった。部屋に戻り、ぽりぽり頭をかく
こんな夜中に何やってたんだろう。時計の針は、ムカつくほど堂々と3の数字をさしていた。…相変わらず、リクは帰ってこないし
「あいつ…事故とかしてなきゃ、いいけど」
洗面台で手を洗い、着ていた寝間着を脱いだ。
「ほんとーに帰ってくんのかねー」
帰ってくる保証はどこにもない。彼が荷物をごっそり残し、帰宅宣言をしていたとしても、彼が居なくなる可能性は十分にあった。
水をコップ一杯飲んで、新しい寝間着を着てベッドにもぐる。目を瞑ってみたものの、眠気は訪れそうになかった。
(リクは成り行きで住み着いちゃったから、面倒くさくて最初以上の詮索はかけなかった。というか、あんまり興味もなかった。
リクは学校に行ってるみたいだけど、どこの高校かは知らない。でも制服には見覚えがある。
あと、友人の気配があんまりしないのは少し妙に感じたことがある。キャラクター的に友達とか多そうなのに。
…帰ってくるなら、早く帰ってこないかな。あの狼のこと、話したい。)
「…」
時計の音が虚しく響くだけで、少しガッカリしてきた私はそんなに眠気もないがベッドに入って固く目を閉じた
「もういいや、寝よ」

