その夜、鳴ったベルの後開けたドアの前にいたのは赤髪の彼だった。彼はでっかいスポーツバックをひとつ片手に立っていた
あ、こいつアレだ、自宅から必要最低限のモノだけ持ってきやがった
…ああ 居座る気満々だ!
「お願い、みさきさん!」
「ちょ、静かにしなさいっ」
「めっちゃ無理なお願いなのは分かってる…!他のところ探そうと思った、でも、俺、アンタが忘れられんくて!」
「いや昨日今日の話だからね、忘れるも何も無いから!」
「みさきさん、俺なんでもするから!」
「あああ静かにしなさいっつってんでしょ!」
彼はしおらしい態度の癖に一歩も引こうとはしない。てゆか、何か私が一方的にフッたみたいな会話になってるし!
「みさきさあああ「とっとりあえず入って、部屋に!」
「みさきさ…!」
声のボリュームを落とそうとしない彼の手を掴み家に引き入れた
これは私の敗北だ
「ねえねえみさきさん恋人いんの?いないよね」
部屋に上がるなり不躾な質問をぶつけてきた彼を睨み付けた
「…は?」
「彼氏」
「…いないよ」
「ふーん。みさきさん、彼氏と別れたんじゃねーの?最近」
!!?
「、んでっ、そんなこと、」
さよならをしたのは確かに最近の話
なぜ、なんで、どうして。

