「どしたん?」
ぼーっと彼を見つめ続けていたことに気づき、はっとした
「や、なんでもないよ」
「さてはー、俺の素性気になっちゃった?お・ま・せ・さん」
「君さあ、年齢サバ読んでるよね!
…本当に帰る家がないのかな、って思っただけ」
「んん、なんつーか…家はあるけど、帰るとまずいんだよ」
「なにそれ」
「こんだけ格好いいとね、色々ありましてね!」
「はあ」
格好良いんだっけ?
ああでも、ああ、格好良いのかも?うん、あんまり見てなかったな
「げっ、もうこんな時間かい」
空になった丼をことんと置いて、時計を見やるなり声をあげた。
「行かねばー!」
「へ?」
「バイトなんだ、日払いの」
「…バイトなんかしてんの?」
「おう、」
彼はテーブルから立ち上がり、そのまま静止してぶつぶつ呟いた。
「んと、ここから向かって15分…制服はあっちに用意されてっから、よし、このまま行けるな!」
聞き間違いではなければ、着の身着のまま行く気になっている。今彼が着ているのは私のジャージだ
「……」
「とか言ってる間に入り時間まであと30分!やっべー!みさきさん、洗面台使うね!」
「は?はあ」
顔を洗って歯を磨いて
誰の歯ブラシだそれ!私のじゃん!?うわふざけんな!
―――家を飛び出していった。あ、私の傘持ってった?
「…おいおいおい!」
リクは私のジャージ(女モン)を着て、家に彼の洗濯物を残し、嵐のように去っていった
「ここに帰ってくる気マンマンだよね、これ」
泊めるのは昨日だけって言ったのに…!やばい、居つかれる!
「あはははは」
「あはは………」
「………」
「ダメっすか…ね」
「そりゃダメですよ」

