an alley cat

「でもさ~古森ってのもカワイソすぎるぜ・・・安奈には好きな人がいるってのにっ」


華夜ちゃんは涙を拭う真似をしながら、口の中の飴をガリガリと音を立てて砕いた。



そして・・・


「古森ィ~~~~!!」



急に立ち上がったかと思うと、椅子に片足を乗せて、窓に身を乗り出してそう叫んだ。



クラスのみんなも、廊下にいた人も、グラウンドにいた人達も、みんな華夜ちゃんを見ている。






「かっ、華夜ちゃん!?」


口をあんぐりを開けたまま華夜ちゃんを見ていた私は、ハッと我に返って、華夜ちゃんのカッターシャツを引っ張った。



「ほらほら!ののも叫びなよ!古森にエール送ってやんの!」



―華夜ちゃん、無理です、ごめんなさい!!


私はぶんぶんと首を振った。



「古森ーファイトー!無理だと思うけど頑張れぇ!」


華夜ちゃんは周囲にお構いなしといった様子で叫び続ける。




―だ・・・ダメだ!!


私は諦めて机に顔を伏せた。









「ののー大好きだー!」




いつの間にか、華夜ちゃんの叫びは、古森くんの応援ではなく、私に向けた言葉になっていた。




―!?


私は机からガバッと起き上がった。



「ののは色白美人だよー!素直でいい子で美人だよー!」

「は、恥ずかしいよ!!」



私は熱くなった顔を隠しながら、華夜ちゃんの肩を揺すった。




このままにしていたら、何を言われるか分からない!




と、と・・・とにかく止めないと!!



だけど何を言ったら華夜ちゃんは止めてくれるの!?



―あぁ!また何か言い出しちゃったよ~!