an alley cat

「何で朝から息が切れてる?」




机に顔を伏せ、ぜぇぜぇと息を荒らげる私たちを見、安奈ちゃんが言った。




私たちは生徒玄関から教室まで、「全速力」と言ってもいい程の速さで走った。



―と言うか、華夜ちゃんの足、速かった・・・。







「や~危なかったよねぇ!」



華夜ちゃんは、まるでスリル満点の経験をしたように、汗を拭きながら笑う。


「よく分からないけど・・・」



私は少し首を傾げながら笑い返した。





安奈ちゃんは、「また華夜が何か仕出かしたんだろ」と言って、私たちの近くにあった椅子に腰を掛ける。



「安奈にも千夏にも話すつもりだったんだけど、千夏いないから先に話すね」

「ん」

「ののも聞いてね」

「あ、うん」

華夜ちゃんはそう言った後、小声でこう続ける。



「冬真、”好きな人”じゃないけど、“気になる人”がいるらしいよ」



その言葉を聞いた安奈ちゃんは、大きな目を更に大きく開いた。


「本当か・・・今まで冬真のそういう噂は聞いたことがなかったのに」


安奈ちゃんが驚いたように呟くと、華夜ちゃんも深く頷く。



「んで、最近って事は・・・のの、あんたの可能性もあるわけだ!」



華夜ちゃんは私を真っ直ぐに指差し、ニヤリと笑った。



「私?」


私は内心ドキリとしたが、すぐに我に返り、首を振る。




「弱気になるなっ!」



華夜ちゃんはそう言った後、「まだ分かんないよ!」とつけたした。




「だからって・・・」

「はいごちゃごちゃ言わないっ!」



私の弱音は、華夜ちゃんの強い言葉でもみ消された。





「あたしらはいろいろ情報掴んでくるから!ののもファイトだよ」

「ファイトだ」


華夜ちゃんと安奈ちゃんは、真顔でそう言ったけど・・・。





―「ファイト」って何をしたらいいの!?





私は口の端を持ち上げて、「うん?」と曖昧な答えを返した。