an alley cat

「んじゃ、お開きにすんぞー」


「解散っ!」





お花見を始めて3時間ちょっと、みんなが一斉に動き出す。



「ののー、帰るよー」


千夏ちゃんの呼びかけに「うん」と答える。



コップをゴミ袋に入れると、既に坂の途中で待っていた3人の所へ走った。



「急がなくっても置いてかないって」

「転ぶぞ」



華夜ちゃんと安奈ちゃんは、苦笑いしながら言う。



「ううん・・・大丈夫」



私は2人に笑みを返すと、先を行く千夏ちゃんの背中を見、歩き出した。






「ってか、今思ったんだけどさ、何で龍斗がいたわけ?」



坂道を下り、閑散とした道を歩いている途中、千夏ちゃんが首を傾げ、立ち止まった。



「あ~、たぶん冬真が誘ったんでしょ、どうせ暇だろ~って」


そう言った後、華夜ちゃんはくすりと笑って「ね?」と私に同意を求めてきた。



「えっ」


私は少し迷って「たぶん」と、曖昧に答えた。




「あの2人仲いいもんねーマジで」


千夏ちゃんは小さく笑い、空にぽっかりと浮かぶ月を見上げる。



私もつられて空を見上げていた。










「・・・で?夏は“でぇと”上手くいったの?」



ふいに華夜ちゃんが悪戯っぽく千夏ちゃんに尋ねた。



「ん?あーそりゃもちろん!バッチリ!」


千夏ちゃんは満面の笑みでピースサインをする。




「よかったな」

「幸せ者め~」

「頑張ってね」



私たちが笑顔で返すと、千夏ちゃんは「ありがと」って笑った。






「さーてとっ!じゃあまた!今度は4人でどっか行こうね♪」




そう言われて立ち止まる。



いつの間にか寮に着いていた。


私は小さく3人に手を振る。





「ののーあいらぶゆーっ」




華夜ちゃんの恥ずかしい言葉が、夜の住宅街に木霊した。




―は、恥ずかしいよ!


私は熱くなった顔を両手で包み、寮へと入った。