an alley cat

―1日目。








人間には“家”というものが必要。


だけど私には家がない。



―どうしているのかって?






この学校、300メートルほど離れた場所に“寮”というものがある。


だけど寮で生活している人はほんの数人。


みんな家が近いからなんだって。



―私はその数人の中の“1人”。




何故か手続きがしてあり、部屋があって、お風呂があって、食事もできる。



―便利!








朝、身支度を何とかし、部屋に鍵を掛けて学校へ。



少し緊張しながらも、生徒玄関で上履きに履き替えていた時、



「はよー黒田さん」

「おはよ」


ふいに後ろから声をかけられ、私はゆっくりと振り返る。





「・・・とっ!?りゅ!?」



思わず口から飛び出しそうになった名前を両手で押さえ、挨拶の代わりにペコリと頭で返した。



「今“と”って言った?」

「“りゅ”とも言ったな」



―「と」=とうま


―「りゅ」=りゅうと





呼べるわけがない!


だって、昨日この学校に来たばかりの私が、2人の名前を知っているなんておかしすぎる!




私は冷や汗をかきながら、「言ってない、ですよ!?」と誤魔化した。



「そぉ?」

「何か疑問系になってんぞ」



そう言って、2人は笑う。




「また教室でな」


冬真くんはそう言って、私の横を通り過ぎて行った。




「そいやーこないだからクロ見かけねぇな」

「あー確かに」


2人の会話が耳に入った。



―ギクッ






バレないとは思うけど、少し、心配・・・。