ぼぅっとしたまま歩いていると、歩道に向けていきなり開いた車のドアにぶつかって、転んだ。
顔を上げると、塗装だけで家のセダンとは違う高級車である事が子供の和にも判った。
降りてきた皮靴の先に、その場に屈んで土下座する。
「…ごめんなさい…。」
怖くて、顔が上げられない。
不意に体が宙に浮く。
「可愛いあんよに傷つけて、悪いなあ、お嬢。」
いまどきいかついダブルのスーツに、後ろに撫で付けた髪。
「そのスジの人」だ。

和の顔は見る見る青くなり、目には涙がたまる。