店では気丈に振舞うものの、やはり連日の無理がたたったのか、トイレに立つたびにふらつく。
眩暈がする、でも、戻らないとお客さんが待ってる。

学校の朝礼で貧血を起こした事を思い出した。
後ろに立っていたりゅうちゃんが、和を運んでくれて。

目が覚めた保健室でしばらく話した後
「お前のこと好きなんだけど。」
と告白された。

ちょっと不良っぽかったりゅうちゃんとは、正直怖くてあまり話した事がなかった。

だけど、他の男の子と違って、ヘラヘラ笑ったりしないで和を見つめて好きだというりゅうちゃんに、迷わず首を縦に振っていた。

「…戻りたい…。」

涙の向こうにりゅうちゃんの幻まで見える。

クラブが入っている雑居ビルのトイレの前に崩れ落ちた。
力強い腕は、多分徹のものだと少しがっかりしながら。