犬鳴に行って二週間後ぐらいして、夜なおとと一緒にいた。
その日は2人とも機嫌が悪くケンカして私は家に帰った。

しばらく1人でいたが、悪かったと思ったので、なおとに電話してみた。

『もしもし?』

《なおとの声じゃなくない?》『もしもし、誰?』

『やすのり。』

"やすのり"はなおとの友達だった。

『あぁ、なおとは?』

『う〜と、おるよ…』

なんか気まずそうだった。

『今どこ?かわって?』

『まだ駅におるよ。でも、今はやめたがいいと思うよ?』

『いいけん、かわってばい。』

と言うと後ろのほうで声が聞こえてきた。

「やめたほうがいいって。」

「大丈夫やん。」

と聞こえてたけど、電話は切れてしまった。

私の家から駅までは10分かからない距離にあった。

私はなおとは浮気してると思って家を出て走って駅に行った。

浮気より残酷な風景だった。

私はみてはいけないものを見たような気がした。

なおとはシンナーをしていた。

私の中で許されなかった。

しかも私が好きになった人がしていたからショックだった。

私はなおとにこう言った。

『…あんたなんしよっと?』