あたしは味噌っかすだけど、お兄ちゃんは優秀なの。だってお医者さんだものってよく言ってたっけ………



可奈は明るい裕美の声を思い出して、涙が零れそうになった。



「立花さんは一階の個室にいるってさ。早く行こうぜ」



「…うん。今行く」



文也に気付かれないよう、リノリウムの床を見るふりをして鼻を啜る。


廊下を歩いている途中でパジャマ姿の子供の霊とすれ違ったが、なるべく目を合わせないようにした。


こちらが気付いているとわかると、彼らは執拗に追ってくる。


何も出来ないのだから、無関心を装う他はない。


受付で案内されたのは外来患者のいるエリアの、突き当たりの部屋だった。


スライド式のドアを開けると、頭に包帯を巻かれた立花の姿が目に飛び込んできた。


いつも颯爽としている立花と違って、簡易ベッドに寝ている姿は痛々しい感じがした。