ノイズ

可奈は振り返って後ろを確かめたが、そこには誰もいなかった。


三つある個室のドアはどれも開け放しになっている。


誰かが脅かそうにも隠れるスペースなどないし、元よりこの場所には可奈一人しかいないのだ。


目の錯覚かもしれない。


そうだ。きっと、単なる見間違いよ。


可奈は恐れを振り払うようにゆっくり深呼吸をしてからもう一度鏡を覗いた。


「なん………で……？」



鏡に写っていたのはやはり可奈ではなく、見知らぬ少女だった。


可奈は恐怖のあまり、鏡から目を離すことが出来なくなった。


可奈が右に動くと、少女も長い黒髪を揺らしながら右に移動する。


可奈が頭上に手をかざすと、少女も同じように手を頭上に向ける。


可奈と少女の動きはまさに表裏一体となっていた。