ノイズ

いつも教室に近い場所にあるトイレを使用していたが、泣き顔をクラスメートに見られるのは恥ずかしい。


今日はあまり人気のない体育館のトイレを使うことにした。


どうか誰もいませんように……


半ば祈るような気持ちで体育館のトイレのドアを開ける。


運動部の朝練はすでに終わった後らしく、トイレに人の気配はない。


よかった。誰もいないみたい。



ホッと胸を撫で下ろした可奈は、洗面台の前に立つと蛇口を捻って勢いよく水を出した。


最初は生温かった水が、徐々に冷たさを増して行く。


自分の弱さを洗い流すように、バシャバシャと音を立てて顔を洗った。


もう一度蛇口を捻って水を止め、濡れた顔をハンカチで拭こうと頭を上げた時だった。


「ひっ………!」



可奈の唇から小さく声が漏れる。


洗面台の鏡に写っていたのは見慣れた自分の顔ではなく、見知らぬ少女の顔が写っていた。