ノイズ

「先生何ですか?」



早く教室に行きたかったが、担任の用ならば仕方がない。


可奈は向き直ってクラス担任の顔を見た。


杉浦は黒いフレームの眼鏡を人差し指で押さえ、コホンと一回咳ばらいをしてから話し始めた。


「実は村上のことなんだが、夕べ家に帰らなかったそうだ。おまえ達仲良かったよな。何か聞いてないか?」



「えっ、沙織が?」



嫌な予感が的中してしまった。


裕美の通夜に表れず、電話もメールも通じないからおかしいとは思っていたけど、まさか家に帰っていないなんて……


「お母さんの話によると夜勤開けで今朝帰宅したそうなんだが、夕食には手を付けていないし、寝室で休んだ様子もない。もちろん、携帯電話に何度もかけたそうだが全く繋がらない。こんなことは初めてだとひどく心配されていたよ。村上がどこに行ったか本当に知らないか?」



沙織の家は両親が幼い頃離婚していて、看護師の母親が女手一つで沙織を育てていた。


母親が心配するのも無理はなかった。