ノイズ

バタン。



後部座席のドアを閉め、小さく息を吐くと運転席に座った。


助手席には悪魔……いや、有栖川教授が薄笑いを浮かべて座っている。


「郊外にわたしの別荘がある。そこに行ってくれ」



「それってスキー場の近くですか?温泉付きリゾートホテルがある?」



そうだと答えると、有栖川教授は背広のポケットから葉巻を一つ取り出した。


それを見た沢村は、慌ててジーパンのポケットからライターを取り出し、葉巻に点火した。


「君は気が利くね。ありがとう」



教授はゆっくりと煙りを吐き出すと、沢村に発車を促した。


頷いた沢村が車のキーを回す。


微かなエンジン音を響かせ、ワゴン車は静かに夜の闇の中へ滑り出して行った。